【連載】胴長短足1の⑤体型の流行

2010.07.12
「なぜ日本人の体型は胴長短足だったのか」1の⑤
・体型の流行

江戸時代の日本では、胴長短足の体型が美しいとされていました。日本人論などについて数多くの評論を書き、現代風俗研究会の二代目会長を務めていたらっしゃった、
故 多田道太郎先生は『からだの日本文化 潮出版社』でこのようにおっしゃっています。

「西洋では、ルネサンス期、第二帝政期のように、ウエストを極端に細くすることが流行した。が、日本の江戸期では、ウエストどころか、バストもヒップも、無きにひとしくすることが美女の条件となった。」

むかしは西洋人と日本人とでは、身体に対する美意識が違ったようです。多田先生はさらにこうもおっしゃっています。

「むかしの子供は野暮な女をあざけって、『鳩胸、出ッ尻、十三文、甲高、親指外曲がり』とはやしたそうである。いってみればこれが、お仙の対極にある女性像といえようが、何の事はない、マリリン・モンローの美を江戸の言葉で嘲笑したようなものだ。モンロー側からすれば、お仙など『撫で肩、胴長、針金娘』ということになろうか。

「美」はこのようにはかなく、もろいのである。社会と文化とによって、変わってしまう。「鳩胸」のひとも「胴長」のひとも、いたずらに恥じいることはない。
きっと「拾う神」―つまり、拾う文化はある。」

お仙という人は、江戸時代を代表する美女の名前です。西洋や現代の日本ではバスト、
ウエスト、ヒップのメリハリのついた凹凸のハッキリとした身体が美しいとされていますが、むかしの日本では凹凸の少ない平坦な身体の方が美しいとされていました。

このように、むかしの日本人が美しいとしていた体型は、西洋人のそれとはほとんど
真逆のものでした。後述していきますが、この体型の方が和服が映えるんです。また、
服装に限らず、日本の美意識は表に出して表現するのではなく、「内に秘める」表現
なんです。

西洋の女性の体型を観察すると、手足が長く、バスト、ウエスト、ヒップの凹凸がハッキリしていますが、筋肉もしっかり付いています。フィギュアスケートを見ていると、アジアの浅田真央選手やキムヨナ選手に比べると、西洋の女性は筋肉質でなんだかゴツゴツしている気がします。最近は日本の女性も西洋人のような体型に近づいてきましたが、筋肉が全くついてないように見えます。ただ痩せて筋肉を削ぎ落として細くなっているだけのように思えてなりません。やはり西洋人の体型とは何かが違うようです。

ただ体型を真似ることだけに夢中になるのではなく、一度その体型の機能について考えた方が良いんじゃないか、と私は考えました。

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