医療とフィットネス業界のこれからを憂う

先日、鍼灸師会の講習でお会いした先生の話の内容と、フィットネス系の先生から聞いた話の内容がリンクしていて興味深かった。

鍼灸師の先生は都内に6店舗の接骨院を経営している。接骨院は保険診療を中心に行っていて、その経営店舗の他に先生自身が治療を行う1回1万円の実費の治療院を構えているそうだ。保険診療では自分の理想とする治療を行うのは難しく、実費の治療院の方では勉強してきた知識と技術を存分に使った治療を行っているらしい。保険診療と実費診療の患者さんの客層は分かれるそうだ。

フィットネス系の先生のお話では、フィットネス業界をマーケティングするとエクササイズの良し悪しが解る会員なんてのはごく少数だそうだ。その少数のために研修費を費やしてインストラクターを養成するのはコストがかかる割に集客が望めず効率が悪い。会員の半数以上を占める良し悪しが解らない会員をいかに囲い込めるかが経営上重要になる。なので、インストラクターは知識や技術ではなく、美人な女性を選んだ方が効率よく集客できるのではないかと。

昔、テレビで某大物芸人が、『俺がプロデュースすれば誰でも売れる。誰でもいい。』と言っていて、あぁ、この人は視聴者を舐めてるな、と感じたのを覚えている。

~ところが、たとえば今の日本の音楽業界を見ていると、プロデューサーは売れっ子の誰それで、作詞作曲は誰で、歌はいま一番人気のある誰々に歌わせて、それを新しいテレビのドラマの主題歌にして・・・ていう場合に、記号的にこうやってこうやってこうやれば競争に勝ち抜けるっていう形とか計算がある場合が多いんです。音楽性とか関係なくて。
(『経済ってそういうことだったのか会議』日経ビジネス人文庫 佐藤雅彦著より)

音楽に限らず、各業界でこれまでのデータが蓄積されているのだろう。
朝のニュース番組も、バックに可愛い女の子座らせて、人気タレントに司会させて、ワンコ(犬)コーナー作って、ゆるキャラアニメ流してという構成が一番視聴率がとれるのかもしれない。もはやニュース番組の形を成してないが。
ニュースの内容がどの局も同じだからこんな工夫をしてしまうのかもしれない。取り上げるニュース内容を変えれば各局が多様化していいと思うのだが、どのニュースを取り上げれば視聴率がとれるのかもデータ化されているのだろう。

自分も店舗を構え始めてマーケティングについて勉強するようになった。
大型店舗が大きな利益を得るためには、7割弱を占めるパイの大きいマジョリティ層をいかに囲い込むかが重要となる。

イノベーター 2.5%
冒険的で最初に革新的なサービス商品を採用する人たち
オピニオンリーダー 13.5%
自ら情報を集め、判断を行える能力のある人たち
アーリーマジョリティ 34%
慎重ですでに採用している人たちに相談するなどして追随的な
採用活動を行う人たち
レイトマジョリティ 34%
流行っているからという、世の中の普及状況を見て、模倣的に
採用する人たち
ラガード 16%
革新的なものについてはようやく最後に採用する人たち
(『効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法』ダイヤモンド社 勝間和代著より)

成人のマジョリティ層、まだ知恵の無い子供、もう知恵の無い老人をターゲットにして囲い込むのが一番効率が良く利益があがるのではないだろうか。しかもこの層を囲むのには専門家が必要ない(キャラクターだけ設定すればよい)ので人件費も安く済んでしまう。

この流れが最近フィットネス業界や医療業界にも色濃く出てきていて心配している。

接骨院で電気治療器具の付け外しと5分のクイックマッサージを行うのに学校で学んだ知識はほとんど必要ないし、フィットネスクラブでマニュアル通りのエアロビクスを踊っているだけであれば体を動かす技術もいらない。

短期的には会社に利益が出るかもしれないが、先人から受け継がれてきた治療の手技の技術や、運動の文化は次世代に伝わらず断絶していく。
そういったものを塞き止めて利益を上げていることに早く気付くべきではないだろうか。