「子どもが自立できる教育」を読んで、自分の情報処理タイプなのか学ぼう

 そうした特性が教育の方法にとりわけかかわってくるのは、子どもたちの情報処理の特性が子どもによって大きく異なるからである。
発達障害や知能の研究は、子どもの能力にはしばしば非常に大きなバラつきや偏りがあり、一人ひとり、まったく特性が異なることを明らかにしてきた。それぞれの子どもには、得意な情報処理の仕方と苦手な情報処理の仕方があるのだ。それは、特別な 「障害 」をもった子どもだけの話ではなく、すべての子ども、すべての大人で、その人その人によって得意とする情報処理の方式が違うのである。

岡田先生は「人にはそれぞれ得意な情報処理の仕方がある」とおっしゃっていて、その特性を理解して子育てや教育にうまく対応する必要があるという考え方に深く共感した。

また、大人の自分自身がどういった情報処理が得意なのかを確認できたのもとても役立った。

情報処理の方式は大きく、「視覚空間型情報処理」「言語型情報処理」に分けられるそうだ。「言語型情報処理」は、さらに「聴覚言語型情報処理」「視覚言語型情報処理」に分けられる。
もちろん全ての子どもがこの3つのうちの1つに分類される訳ではないし、複数を合わせ持っている。

本著にチェックシートで各タイプの特徴と問題点がまとめられている。
ここでは特徴の一部分だけ抜粋して紹介するが、興味のある方はぜひ本著を手にとってほしい。

視覚空間型の特徴

・言葉で学ぶより、体で感覚的に覚える
・目で見て、瞬間的な反応や処理を行うのに長けている
・理論や抽象は苦手で、実践や応用に関心がある

長嶋茂雄さんがこのタイプだそうだ。
私が子どもに指導していても、「腰をグッと入れてね」とか、「こんな感じで腕をビュッと振るの」といって見本をみせると真似して直ぐにできてしまう子どもがいる。
パフォーマンスにムラが出る子もいるので、「上手くいったけど今どんな感じだった?」と一緒に振り返り、言語化して再現化できるように促している。(言語化するとかえってできなくなってしまう子もいるので注意している。)

このタイプの子どもは、言葉で自分の考えや気持ちを表現するのが苦手、計画性に乏しい、衝動的に行動しがちという問題点を抱えていることが多いそうだ。この部分を大人が補ってあげたい。

聴覚言語型の特徴

・抽象的な理屈よりも、具体的で身近なことに関心
・本で勉強するより、教えてもらった方がよく頭に入る
・物事を論理ではなく、人間的な感情や物語で理解する

腕を振るときの手の形を伝えるのに「卵を持つようにソッと手を握ってね。」というような声がけが有効なタイプだと思う。
会話言語に強く、相手の言葉の意図を読み取る能力が高いタイプなので、コーチとディスカッションできるとよいだろう。

視覚言語型の子どもに同じ教え方をしたら、「でも、テレビに出る短距離の選手は手の指先を伸ばしていますよね。」と返ってきて面白かった。指導する側としては、手を握り過ぎて力まないでねと伝えたかったのである。

視覚言語型の特徴

・具体的なものより、抽象的な概念に強い
・分析が得意で、物事を論理化、法則化、図式化して理解
・マイペースを好み、対人関係は不器用で消極的
・自分の興味に熱中する一方で、それ以外のことには無関心

細かいロジックがきちんとしていないと頭に入らないタイプだそうだ。
はじめに関節の構造など簡単に言葉で説明して納得すると運動ができるようになることがある。
「今、脚が90度くらい上がってるよね?110度くらいまで上げられる?」というような声がけをすると腑に落ちた顔をする。

集団指導では難しいところもあるだろうが、子どものタイプによってデモンストレーションや声がけの仕方など指導方法を使い分けられるとよいだろう。人の話や理屈から入る聴覚言語型と視覚言語型は、集団指導を受けるのに向いている。
視覚空間型は先に実践させて後から声がけをするようにして、集団から外れすぎないように注意する。良い意味で外れている逸材であればレベルの高い環境へピックアップしたい。

「名選手が名コーチになるとは限らない」とよくいわれるが、視覚空間型の選手でプレーの言語化が苦手だった場合は難しいかもしれない。
長嶋茂雄さんが松井秀喜選手のバットのスイング音を聞いてを指導したという逸話は、視覚空間型同士の情報伝達だと考えると面白い。

 PISAの学力テストで日本の子どもたちが抱える弱点として露呈した問題は、知識といった静的な学力ではなく、理解したり、考えたり、説明したりという動的な学力が弱いということである。動的な学力は、知識詰め込み型の勉強をすれば身につくというものではない。むしろ、問題解決能力や統合能力に左右される。

 問題解決能力は、課題の意味を理解し、試行錯誤しながら解決法を見つけ出していく能力であり、知識を暗記するという受け身的な学習では身につかない。自分で調べてみたり、考えついた方法をあれこれ試してみたりといった、主体的で、模索的な学習が必要なのである。

 統合能力は、先にも述べたように、遊びや社会的体験やチームワーク、スピーチや討論や作文といった、日本ではあまりテストや成績の対象にならない取り組みによって培われる。

勉強と同じく、運動も問題解決能力や統合能力を発達させるために役立てたい。

日本のスポーツ指導は師匠と弟子の関係に陥りやすい。
師匠と弟子のように長幼の序を重んじた上下関係がハッキリとした関係ではディスカッションがむずかしい。
自分のプレーの問題点に自分で気づけて、その問題点をどうやったら改善できるのかを指導者に質問できるとよい。

美しい師弟関係の物語が好まれるが、師匠に従順すぎる弟子は師匠を超えられない。
師匠に依存するのではなくて、自分自身の自立のために師匠を利用できるようにしてほしい。

◾︎自分用メモ

 子どもは、押しつけたり、強制したりするほど、頑固で、反抗的になるのだ。逆に自分のペースや関心を受け止められ、尊重されると落ち着いてきて、むしろ周囲とも和合的になる。